camera

 私の趣味の1つが写真撮影です。

 というわけで、先日横浜で行われていた『カメラと写真のワールドプレミアショー「CP+(シーピープラス)」』を観てきました。

 ここでは、最新機や気になる機材を実際に手にして操作できますし、今後のトレンド情報などを手に入れることもできます。

 しかし、それ以上にここでしか得られないものがあり、私はいつも楽しみにしています。
 それは、いつ聴いても興味深い、

開発裏話

 今回聴かせていただいたとても感銘したお話し。

 と言ってもワールドプレミアショーらしい新製品の話では無く、既に発売している製品“レンズ”の設計ポリシーについてでした。

 そのレンズ、発売当時は画像にゆがみがあるとのことで、評判が悪かったそうです。

 ところがそれは、設計者は解っていてあえてそうしたとのこと。

 私も前職は製品開発をしていたので、製品を完成させていく上で悩んだことのひとつに、

あちらを立てればこちらが立たず

な事があります。

 そんな時にはユーザーの立場から、最も喜んでもらえるだろうところにバランスをとるのです。

 今回聴かせていただいたお話しもその通りなのですが、しっかりと今の時代に合わせた、最もユーザーにとって最適なバランスでした。

 画像のゆがみは、とても目立つ欠点です。

 そんなわかりやすい欠点を残してまで抑えようとした別の欠点は、専門用語で『像面湾曲』と言い、一見してもとても判りにくい欠点。

 なぜ、判りにくい欠点を抑え、判りやすい欠点を残したのでしょうか?

 実は目立つ欠点である画像のゆがみは、一般ユーザーでも使える画像処理ソフトを使えば、それこそ“一瞬”にして補正ができてしまうのです。

 ところが目立たない方の欠点は、後処理では直しようがないものです。

 ユーザーが良い作品を創り出すのに必要なことは、後処理ではどうにもならない“開発者にしかできない”部分をとことん追い詰め、ユーザーがどうにかできるところは任せる、という思想だったのです。

 もちろん、フィルム写真時代では通用しないバランスです。
 デジタルカメラであるからこその、新しいバランスでしょう。

 過去の常識に囚われず、現在だからこその、ユーザーにとって最も利益をもたらす形とは何か、そんな想いが込められた製品の存在を知ったのでした。

 私も自分の仕事において、今目の前にいるクライアントにとって、最も好ましい姿とはどのようなものか、想いを込めていきたいと考えました。